ロゴマークができるまで
カラーウーンVRプロジェクトのロゴマークは、病院の中庭に面するイーワーンの小窓をモチーフにしています。
4つの丸窓と2つのアーチ窓を配置したデザインは、カラーウーンの寄進施設の中でも、ここにしか見られないものです。5つの小窓を囲うアーチの内部は、細やかなスタッコ装飾で埋め尽くされています。ほとんど植物紋様ですが、両脇のアーチ窓と最上部の丸窓の周囲は文字模様です。何と書いてあるのでしょう?拡大して見てみましょう。
アラビア語を学習している方は、解読に挑戦してみてください!こたえは、この記事の最後にあります。この他にも、寄進施設内の随所に文字模様の装飾があります。是非、VRツアーで探してみてください。
さて、話を戻しましょう。ロゴマークを作ろうとなったときに、メンバーや作成に携わってくださった業者の方からいろいろなアイデアやイメージをいただいてたのですが、そのうちに、「窓」をモチーフにするのがよいのでは、と思うようになりました。それは、窓は、扉と同様、空間と空間をつなぐだけでなく、フレームとして、その奥に広がる世界を飾る役割を持っています。本プロジェクトのVRツアーもまた、単にパノラマ写真を見ることができるというだけでなく、空間の楽しみ方をも伝える窓のような役割を果たすものになるのではないかと考えたのでした。
窓をモチーフにすることが決まったとき、真っ先に浮かんだのは、ファサードの窓です。
二連の半円アーチの上部に丸窓をつけ、それらを尖塔形アーチで囲ったデザインです。ゴシック建築の中世の教会を思わせるようなこの窓は、二重構造になっており、外側には打ち抜き細工のスタッコ窓、内側にはステンドグラスがはめられています。
これは内側から見た図です。マドラサの礼拝室のキブラ面ですが、この写真だと分かりづらいので、この下に、同じく礼拝室の別の窓も載せておきます。
外側から見たときと、内側から見たときの違いに気がつきましたか?窓の周りのスタッコ装飾とステンドグラスが華やかさを演出しているのはきっとお気づきかと思います。窓の形はどうでしょう?そうです、外側から見たときの二連アーチは半円形だったのですが、内側から見ると馬蹄形なのですね。同じ窓でも、見る位置によって、違うものに見えるのです…!
モチーフはこれに決まったかと思いました。しかし、その後の紆余曲折を経て、病院の窓に落ち着いたのです。これはなぜかというと、カラーウーンはこの寄進施設を創建する際に、病院をメインの施設として構想していたから、です。しかも、マドラサにいたっては、カラーウーンは元々マドラサを含めるつもりはなかったと言われています。建設工事を担当したアミール(軍隊長)のサンジャル・アルシュジャーイーが、勝手に(!)マドラサを作ってしまい、これにカラーウーンは怒り、初めて視察に訪れた際にはマドラサには入ろうとしなかったと伝えられています。こうしたエピソードもあるので、カラーウーンの意志を尊重して病院の中から素材を見つけた方がよいということで、目をつけたのが、あの窓だったというわけです。
そこで深見さんがくれた解説(この窓の描き方)を見て、このデザインが、見た目の単純さとは裏腹に、計算されたものであることがわかりました。
このようにして、ロゴのモチーフが決まっていったのですが、その過程が簡単でなかっただけに、愛着を感じています。是非、パノラマツアーの中で、この窓を探してみてください。
窓枠の文字装飾の文字は、「الملك(アルマリク)」の繰り返しです。マリク(ملك)という単語は、王、君主などの意味がありますが(アルは定冠詞)、ここでは、アッラーの99の美名としてこの語が使われています。