意匠の一覧

  • インスクリプション

    欧米語表記:inscription

    英語で刻むこと、あるいは銘刻を指す。イスラーム建築においては、形式的なイスラーム書体で表現されたアラビア文字で、建物を装飾することが好まれた。その文章には、クルアーンの章句が描かれることが多いが、施主や建造年なども書き添えられる。マムルーク朝建築においては、コーニスなど帯状の装飾帯がインスクリプションで装飾される事例が多く見られる。

  • 幾何学模様

    欧米語表記:Geometric Pattern

    直線によって構成される幾何学図形(三角形、四角形、五角形、星形など)を規則的に繰り返すことによって、平面を埋め尽くした模様。基本的にはコンパスと定規で描ける図形であり、最小単位を見いだすことによって、その構成方法が理解できる。イスラーム建築においては具象的な絵画を忌避したために、幾何学模様、植物模様(アラベスク)、文字模様が極度に発達したが、そのすべては幾何学を基本としている。ドーム等の球面に適応されることもあり、マムルーク朝後期には、幾何学模様を施したドームが好まれた。

  • クレネレーション(銃眼装飾)

    欧米語表記:crenellation

    建物の上部に立ち上がる壁(パラペット[手すり壁]、バトルメント[胸壁])で、装飾的な凹凸をもつものを指す。この凹凸は本来、城塞建築において矢や銃をうつ狭間(マーロン[銃眼])を作るために設けられたものである。乾燥地域の建築では陸屋根(平らな屋根)に、装飾的な透かし壁を立ち上げることがあり、その部分をクレネレーションと呼ぶ。カイロのイスラーム建築においては、イブン・トゥールーン・モスクの実例が特徴的なものとして残っている。

  • ティラーズ

    欧米語表記:tiraz アラビア語転写表記:ṭirāz

    ペルシア語の刺繍から派生した言葉で、本来は、初期イスラーム時代に特長的な帯状の銘文刺繍、あるいは帯状の銘文をもつ織物をさした。のちに、建築のファサード等の銘文帯をも指すようになった。ここでは建築に用いられた帯状のアラビア文字装飾を指す。特に、カラーウーン複合施設のファサードを飾るティラーズは著名である。

  • 馬蹄形

    欧米語表記:horse-shoe arch

    円の半分は半円となり半円アーチはこの形を使うが、上部の半円よりもさらに下部の半円の一部を含む部分、すなわち馬蹄の形のものを半円馬蹄形アーチという。半円ばかりでなく、尖頭形アーチにおいてもアーチの最大幅から下方でさらに幅を狭めた場合は馬蹄形アーチとなる。また、平面上のニッチやアルコーブ(壁の凹部)の場合も、半円よりも大きな範囲を囲む場合は馬蹄形となる。コルドバのメスキータのミフラーブ(10世紀)は、平面にも立面にも馬蹄形アーチを使った好例である。馬蹄形アーチは、アンダルシアやマグリブなど地中海西方の建築に顕著である。

  • メダイオン装飾

    欧米語表記:medallion

    円形の建築装飾を指す。アーチのスパンドレル(アーチ両肩の三角小間)と対になるように使われる例は、広くイスラーム建築に見受けられる。カイロでは、アズハル・モスクの中庭ファサードにおいて、アーチの頂部に配置されたメダイオン装飾を見ることができる。その後、ファーティマ朝のアクマル・モスクにも同様なメダイオン装飾が見られ、マムルーク朝期には壁面だけではなく、床面等の様々な箇所に、様々な分割法でメダイオンの装飾が挿入された。特にカラーウーンの寄進施設では円形装飾の使用頻度が高く、アーチとの組み合わせ、病院の窓装飾などは、幾何学的構成の高度さを示す実例である。

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