細部名称・部分の一覧

  • アーケード

    欧米語表記:Arcade

    アーチが開口する壁を一方向に連続して構成されるアーチが連続する壁体、または曲面天井(ヴォールト)に覆われた路線状の空間をも指す。日本のアーケード街は後者である。

  • アーチ

    欧米語表記:Arch アラビア語転写表記:qaws

    壁に開口する部分を作るために弧状に渡した構造材を指す。石やレンガを積み重ねた建物(組積造建築)において屋根を架ける場合や入口を作る場合などに、横方向に渡す長大な部材が得られない場合、小さな部材を迫持ち状に配することで、構造的に安定した部分(横架材)を作ることができる。イスラーム以前には、地中海周辺に半円形、ペルシアに放物線形のアーチがあったが、イスラームの普及以後、尖頭形、多弁形などさまざまな形が作られ、構造に加えて装飾的な役割が大きくなった。

  • アバクス

    欧米語表記:Abacus

    柱頭(柱の上にのる装飾的な部材)と梁の間に挿入された部材で、古代ギリシア・ローマ建築では厚板状の場合が多い。平面を広げることによって、梁との接合を安定させ、高さを調節するために使われる。

  • 櫛形アーチ

    欧米語表記:segmental arch

    半円アーチを構成する円弧のうち、上部だけを用いたものを、その形から櫛形アーチという。イスラーム建築では尖頭形アーチを用いることが多いが、マムルーク朝建築においては、フラットアーチ(形は梁と同様に平だが、部材を迫持ち式に積んだもの)の荷重を低減するために、その上部に櫛形アーチをかけて空間を作ることが好まれた。

  • コラム(円柱)

    欧米語表記:column

    円形断面の柱を指す。地中海世界においては、コラムの伝統が強く、エジプトにはファラオ時代、ヘレニズムからコプト時代まで数多くの建築にコラムが使われた。イスラーム以前にも石材の転用は行われていたが、イスラーム化以後その傾向は顕著となる。モノリス(単一部材)の円柱は、2次的利用が容易かったので、アムル・モスクやアズハル・モスクをはじめ各所に転用され、マムルーク朝後期までは、モスクは転用材の円柱で構成されたものが大半を占める状況である。通常はヘレニズム以後の円柱が転用されたが、マムルーク朝期には、意図的にファラオ時代の柱を転用することもある。柱礎や柱頭で高さを調整し、不揃いな円柱で空間が構成された。中には柱頭を柱礎としたものもあり、それぞれバラバラに使われた。

  • ジョイスト(横架材)

    欧米語表記:joist, beam, girder 別称:根太(ねだ)、梁、桁

    建物の横架材(柱や壁の上に水平に架ける直線材)のことを指し、横架材によって、建物に屋根を架けることが可能となる。日本語では床を構成する場合には根太(ねだ)、天井や屋根を構成する場合には梁や桁と呼ぶ。なお、根太天井とは、上階の床組がそのまま下階の天井となったものを指す。

  • スパン

    欧米語表記:span

    建物の連続する柱、あるいはアーチにおいて、柱と柱の間、あるいはアーチの間の寸法を指す。柱を林立させて平面を作る場合、例えば、直線上に6本の柱を建てると5スパンが形成される。その直行方向に3本ずつの柱を加えれば、3スパンが形成されることになり、間口5スパン奥行3スパンの建築と呼ぶことができる。

  • スパンドレル

    欧米語表記:spandrel 別称:三角小間

    矩形の中にはめ込まれたアーチを想定した場合、アーチによって切り取られた上部両脇の2つの部分(ほぼ三角形)を指す。この部分に対となる装飾を施すことも多い。

  • タイバー(緊結材)

    欧米語表記:tie bar

    鉄や木の部材でアーチの下部を結び、アーチが外へと開こうとするのを防ぐ役割をもつ。カイロのイスラーム建築では、アムル・モスクやアズハル・モスク、ファーティマ朝期のアクマル・モスクやサーリフ・タラーイー・モスクにおいても確認できるが、これらの部材が創建当初のものかは明らかではない。アーチやドームには外へ開こうとする力(スラスト)が加わるため、それを抑えるための建築的な工夫がなされた。タイバーもその一つであり、同様な役割をもつものとしてその重量によってスラストを抑えるバットレス(控え壁)がある。

  • ニッチ(壁龕)

    欧米語表記:niche, alcove, recess 別称:アルコーブ、凹部

    部屋の壁を凹ませた部分を指す英語で、上部にアーチを架け、内部に彫像などを置くことが多い。イスラーム建築においては、モスク等でメッカの方角を指し示す装置(ミフラーブ)がニッチの形を取る。同様な部分を示す言葉としてアルコーブも使われるが、アルコーブの方がより大きな空間を指す傾向がある。

  • ピア(構造柱)

    欧米語表記:pier

    建築を支える構造的な垂直部分を指し、コラム(円柱)に比べて断面が大きく、壁と一体化している。例えばカイロのイスラーム建築の早い例ではイブン・トゥールーン・モスクやハーキム・モスクにおいてはピアが使われ、アムル・モスクやアズハル・モスクにおいてはコラムが使われる。

  • ピシュターク(四方形の壁面)

    欧米語表記:pish taq (entrance arch)

    ペルシア語に由来し、イーワーン等の大アーチの外側を囲む高く立ち上がった壁部分を指す。イランや中央アジアでは、ピシュタークが一段高く立ち上がることが通例で、カラーウーンのマドラサの礼拝室とそこに向かい合うイーワーンはその一例である。カイロではスルターン・ハサンの4つのイーワーンように壁の高さが等しくなる例が多く、ピシュタークが立ち上がる例は少ない。

  • ファサード

    欧米語表記:facade

    建物の正面外観(立面)のことをファサードという。

  • フリーズ(装飾帯)

    欧米語表記:freeze

    西洋建築史の用語で、古代ギリシア・ローマ建築の柱の様式において上部のエンタブラチュア(柱上の水平部分)を構成する要素の一つで、下からアーキトレーブ(主梁)、フリーズ、コーニス(軒蛇腹)から構成される。これから派生して、装飾を伴う水平帯も、フリーズと呼ばれるようになる。

  • フリンジ

    欧米語表記:fringe, border, edging 別称:連続縁(ふち)装飾

    線状の縁や繰形(モールディング)を多数並べた房のような装飾。ミナレットや墓塔などに彫られる、帯状の浮き彫り(断面が角形や円形となる)を指す。デリーのクトゥブ・ミナールが代表的な例であるが、カイロの城塞にあるスルターン・ナースィル・ムハンマドのモスクのミナレットなどにもフリンジ装飾が見られる。なお、ドームの外側に同様の装飾を施したものをリブ・ドームと呼び、カイロのマムルーク朝建築においては、サルガトミシュの複合施設やタグリー・ビルディーの複合施設のドームに見られる。

  • ベイ(小間)

    欧米語表記:bay

    柱を林立させた多柱式建築において、近接する柱に囲まれた部分を指し、普通は四角形平面となる。日本語では間(けん)が相当し、日本建築では間口X間奥行Y間の建物と表現する際などに用いる。

  • ボーダー

    欧米語表記:border

    壁面を分割する装飾において、一つの単位となる文様の周囲を囲む帯部分を指す。絨毯等の外周を囲む帯をも指す。ボーダーをつけることによって、内部に囲まれた模様を引き立たせる効果を狙ったものである。

  • リンテル(まぐさ)

    欧米語表記:lintel アラビア語転写表記:ataba

    リンテルは垂直部材(柱、ピア、コラムなど)の上に水平に渡された部材(梁、桁根太など)を指し、日本語では楣(まぐさ)と呼ぶ。建築の基本的な構法として、楣式(梁式)、アーチ式、壁式などがある。

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